登場人物
「神ノ禍」は群像劇であるため、かなりの人数が登場します。そしてこのページには、作中に名前が登場する人物ほぼ全てが載っています。
45人以上と、とんでもない人数になっていますが。とはいえ、身構える必要はありません。GOTほど面倒くさい話ではありませんので。
主要人物の欄には「More」のボタンが付いており、そこから詳細な情報を見ることができます。そして、そのボタンが欄内に無い人物は「主要人物ではない」となります。主要人物以外は、頭の片隅に留める程度で大丈夫です。
Taz'Al Ganeposs
フリアとベンスの息子であり、本作の主人公。不仲な両親に揉まれ、ちょっとだけ心が荒んでいる。なお、諸事情により第一巻には登場していない。
好奇心旺盛な青年であり、一番の関心事は薬草。幼少期には、薬師であるユインやメズンを度々質問攻めにして困らせていた。
両親というよりかはリシュに似た性格を持っていて、かなりの個人主義者であり、あまり他者を信用していない。また規律や常識に囚われない自由すぎる性格であることから、母であるフリアとの相性が悪く、意見の相違からの衝突を繰り返している。
〈炎ノ聖獣使い〉となった人物。第二巻以降は、貴族の子供たちに息子がいじめられたことを機に、すっかり心配性の母になってしまう。しかし心配がすぎて、息子から距離を置かれるようになる。
鍛冶屋の娘である彼女は、父の後を継げるような一流の鍛冶師になることを夢見ていたのだが。しかし彼女の努力を父親は認めてくれず、結局その夢が叶うことはなかった。
夫であるベンスの生活力の無さに頭を悩ませており、リュンと共に彼の尻拭いに追われる毎日を送っている。夫に対する不満が募り募って、近頃は喧嘩が絶えない。
〈炎ノ聖獣〉である九尾の狐。姿を、子狐から成体へと自由に変えることができる能力を持つが、基本的には子狐の姿でいる。そして尻尾の先からは常に、モノを燃やさぬ実態なき炎をともしている。
口が悪く、余計な一言を言いがちである。また嫌味な性格をしていて、皮肉も多い。子狐のような愛くるしい見た目に反して、まったく可愛くはない狐である。
そんなリシュは、不仲な両親の間で板挟みにされているルドウィルのことだけは気にかけており、そしてルドウィルに対しては兄貴風を吹かせている。
〈水ノ聖獣使い〉である人物。以前は旅の吟遊詩人としてフーガルという名の相棒と共に活動していたが、フーガルが殺害されたことを機に引退。今は〈水ノ聖獣使い〉以上でも以下でもない存在になっている。
第二巻以降は、王宮と猛獣舎を行き来しつつ、〈神護ノ十剣〉の隊員たちから頼まれる雑用や買い出しを淡々とこなしていくような日々を送っている。
臆病で引っ込み思案かと思いきや、大胆不敵な行動を取ってみたり、勇敢なことを言ってみたり、またある時は随分と達観したような態度を取ってみたりと、掴み所がない性格をしている。
〈水ノ聖獣〉である一角獣。いつからかスザンと行動を共にするようになった存在。スザンもシクも、そうなったキッカケのような出来事はよく覚えていない。何とも奇妙な関係である。
常に穏やかであり、落ち着いた印象を周囲に与えるシクだが。しかし非常に臆病であり、すぐに姿を消してしまうという特徴も持っている。
体を透明化する能力を持っているため、まさに「姿が見えなくなる」のだ。
ここぞという場面ですぐに逃げてしまうため、スザンからは「やや頼りない相棒」と思われている。
〈風雷ノ聖獣使い〉である猛獣使い。ラムレイルグ族の族長ダグゼンの一人娘で、男よりも男らしいと称される性格の持ち主。豪胆であり、世話焼きでもある。
いずれ族長を継ぐことになるだろうと期待されていたが、《光帝》後継者争いに巻き込まれたことがキッカケで辞退。幼馴染であり親友であるヌアザンにその座を譲った。
義理堅い人物であることから〈神護ノ十剣〉の隊員たちから、そしてセィダルヤードからも信頼されている。また彼女は「美味い飯を作る」という理由からリスタをかなり気に入っている。
〈風雷ノ聖獣〉である白獅子。光のように早く走れる能力を持っているのが、滅多にその能力を使わないため、ウィク自身も忘れているフシがある。
ラムレイルグ族の、そしてクルスムの影響を受け、かなりこざっぱりとした性格をしている。また個人主義的という共通項もあって、同じ聖獣であるリシュと仲が良い。シクとの関係はぎこちなく、メクとの関係は最悪である。
主人であるクルスムのことが大好きで、そうそう滅多なことでも起きない限りは彼女の傍から離れようとしない。
元、暗殺者。国一番の剣豪であり、〈大神術師〉すらも恐れをなすほどの頭脳の持ち主であり、同時に大罪人である悪漢。神国に身を捧げることを条件に先代の〈大神術師〉から恩赦を受け、現在は「神国の猟犬」として活動している。
ぷかぷかと空中に浮く水の玉から構成される、奇妙な龍神カリスを伴っていること。それと彼自身が隻眼であることから、近年は「独眼の水龍」と呼ばれることが多い。
現在は、ワケあって借りがあるヴィディアから「無辜の民には絶対に手を出すな」と言い渡されているため、無辜の民には手を出していない……はずだ。
パヴァルの入隊によって、大幅に在り方が変えられる以前から〈神護ノ十剣〉に所属している唯一の隊員。御前試合によってその地位を勝ち取った、最後の者。武ノ大臣も兼任している。
パヴァルとは正反対で、堅物で融通が利かず、しかし誠実で、決して嘘をつかない実直な人物。さぞかし信用されている――かと思いきや、実はあまり信用も信頼もされていないという悲しい立場に置かれている。
パヴァルという怪物じみた仕事人、そしてディダンという規格外の逸材によって、それなりに仕事はできるはずの彼の存在感が薄れているという現状がある。
生まれつき隻腕の武人。槍術において、彼女の右に出る者はいないと言われている。
王都での生活も長いはずが、未だに故郷である南アルヴィヌの訛りが抜けていない。そんな彼女は朗らかな性格の持ち主で、〈神護ノ十剣〉の隊員たちの多くから、母親のような存在として慕われている。
しかし普段の温和な雰囲気とは裏腹に、戦闘時は苛烈で峻厳になるらしいが、これはあまり知られていない。というのも、近年は戦うことも滅多にないからだ。
現在は第二分家当主であるイゼルナの警護の任に就いている。イゼルナの「お忍び」にしょっちゅう付き合わされている模様。
セィダルヤードの警護の任に就いている人物。元はラントによって拾われた南アルヴィヌの孤児だった(物心がついたときには既にひとりであった為、両親のことは何も知らない)。
類まれな動体視力と俊敏さの持ち主で「鷹の目のベンス」の異名を持つ。身体能力も優れており、その能力を評価されて国の最重要人物であるセィダルヤードの護衛に抜擢された。
しかし頭脳のほうは今ひとつ足りず、難しいことを考えること、そして理解することが苦手。そのため、度々ディダンに罵倒されている。
〈神護ノ十剣〉に所属していながらも、どういうわけか現在は酒場ギャランハルダで働いている人物。エレイヌの下で踊り子の修行をしながら、接客をさせられている。
ベンスと同じく、元は南アルヴィヌの孤児で、ラントに拾われて〈神護ノ十剣〉に来たという過去を持つ。しかし待遇には雲泥の差があり、こちらは冷遇されている模様。ベンスがセィダルヤードの護衛役に大抜擢された裏側で、リュンはパヴァルから剣を握ることすら許されていなかった。
現在でも扱いは大して変わっておらず、他の隊員たちからは「誰かが倒れたときの補欠」と認識されている。
シェリアラの警護の任に就いている人物。人たらしな性格であり、宮中に知人が多い。従者たちと雑談していることも多く、よく「サボっている」とディダンに咎められている(しかし本人が言うには「情報収集の一環」とのこと)。
能力そのものは平々凡々であり、秀でたところは何も無い。しかし、面倒事をのらりくらりと躱す才能だけは持っているため、波乱の宮中を生き残れている。
ハエすらも殺せない人間であり、〈神護ノ十剣〉唯一の良心とも言われている。そんな人間性もあって、《光帝》正統後継者であるシェリアラの護衛役に抜擢された。
出自不明であったり、シアル王家を思わせる容姿をしていたりと、秘密と謎に満ちた隊員……――ではあるのだが、そんなことよりも天然ボケ具合とドジっぷりが目立つ人物である。
常にニコニコと笑っているが、これはパヴァルからの指示によるもの。やらかしや失言が重なり、「余計なことは何もせず、お前は黙って、ただ笑っていろ」とパヴァルにドヤされたことから始まっている。
かつてはディダンに甲斐甲斐しく世話を焼かれていたが、現在は猛獣舎にて面倒見のいいクルスムとウィクに可愛がられている。
ラムレイルグ族出身の猛獣使い。山犬を主に使役する。典型的な「ラムレイルグの男」で、気さくで明るい人柄であり、第一印象は良い傾向にある。
しかし短気かつ短絡的であり、貴族が大嫌いという特徴も持っており、王宮内で度々問題を起こしている。従者たちからの評判はめっぽう悪く、どちらかといえば嫌われている。
またリスタとの相性が悪く、いがみ合いをよく起こしている。その影響で彼は、リスタを慕っているディダンを敵に回しており、第二巻以降は危うい立場に置かれる。
サラネム山きっての変人メズンに育てられた薬師。しかし同郷の者たち曰く、ユインは「メズン以上にぶっ飛んでる」とのこと。
衛生兵という名の下、〈神護ノ十剣〉らしい働きはしていない。また上官であるケリスからもパヴァルからも信頼はされていないため、そのテの仕事は振られることがない。仕事が割り振られたとしても、書類仕事が関の山。
突然立ち止まったかと思えば道端に生えている雑草を凝視したり、野良猫と遊び始めたり。かと思えば、ある時には露天商と揉め事を起こしてみたりと、行動が予測不能。
〈神護ノ十剣〉に三歳で加入したという経歴を持つ人物。呼称は「ディダン」。通称は「ドレインス家の悪魔」。
いかにも西アルヴィヌ人らしい小柄な体格と、いかにも西アルヴィヌ人らしい強気な性格の持ち主。弁が立ち、頭もキレるため、とにかくタチが悪い。
身体能力は高くとも知性は今ひとつな隊員たちの世話役を押し付けられることが多い。苛立ちながらも世話を焼くあたり、パヴァルとは違って人の心はある様子。
第二巻以降は「大臣補佐官」として王宮で地道に働きつつ、武ノ大臣の座を虎視眈々と狙っている。
パヴァルの養女で、酒場ギャランハルダの店主。「カレッサゴッレンの女帝」との異名を持つ。
赤いものがとにかく大好きで、赤い服を着て、赤い靴を掃き、赤い葡萄酒を好んでいる。店の内装も赤を基調としている。
ラントとは同じ環境で育った兄弟姉妹のような関係。また彼女は年下である〈神護ノ十剣〉の隊員たちや、その関係者たちのことを気にかけ、可愛がっている。表向きは、面倒見のいい姐御だ。
しかし彼女には裏の顔がある。パヴァルという怪物に鍛え上げられた人物であるため、闇社会に慣れ親しんでおり、暗部に精通しているのだ。その知見と手腕を活かして、数々の情報工作を行ってきた。
第一分家の当主で、当代の政ノ大臣。シロンリドスの落とし子として産まれた。赤子の頃に貧困街に捨てられたが、侍女長レグサに拾われたという過去を持つ。
レグサが嗾けた政争に巻き込まれる形で、八歳の時に王家入りを果たす。が、その際に当時の《光帝》シェミルからの命令で全去勢をされる羽目に。そんな逸話のせいで「玉無し卿」という不名誉な仇名を得る。
後に政争を利用して成り上がり、王制の乗っ取りに成功。父であるシロンリドスが遺した負の遺産を一掃するため、現在も齷齪と働いている。
セィダルヤードの娘とされているが、そうだと仮定したときに、色々と辻褄が合わなくなる謎の存在。しかし当人を始め、神国の者たちは彼女こそが「セィダルヤードの一人娘である」と信じて疑っていない。
そんなこんなでセィダルヤードから気味悪がられ、敬遠されて育つ。父親に構ってもらえなかったこと、そのせいで宮中の者たちからも敬遠されるようになってしまったことから、グレてしまった。
色々と拗らせた末、シアル王家という地位を捨てて神国軍の一兵卒となることを決意。そしてセィダルヤードに反旗を翻す。
第二分家の当主。第二分家であるため《光帝》の継承権は持たないが、しかし《光帝》に求められる条件の一つである「肉眼で観測できるほど濃く刻まれた聖光ノ紋章」を額に持っているため、話がややこしくなってしまっている。
とはいえ本人は《光帝》後継者争いに参加するつもりはなく、彼女の心配事は二つのみ。死んだことにされている兄のリストリアンスの行方と、未だ豊かな生活は得られていない民たちのこと、それだけだ。
母親であるシェルティナに似て、度々「お忍び」という名の脱走をしている。
シェリラとシロンリドスの間に生まれた娘であり、《光帝》の正統後継者とされている人物。
母親よりはマシだろうと期待を寄せられていたが、しかし父であるシロンリドスの影響を受け、歪な思想をどこか持っているフシがある。
彼女が従者たちを見下すような態度を取り始めるようになってから、急速にシェリアラ待望論は勢いを失くし、そして彼女は宮中での信頼を失っていった。
そうして孤独になったシェリアラは、寂しさの裏返しから浪費癖を加速させる。これが結果としてセィダルヤードを失望させた。
歴代最悪の暴君と評された、先代の《光帝》。第一巻では危篤状態にあり、第二巻以降は故人となっている。
「幼いころはまるで言葉を扱えず、また理性もなく、まさしく服を着た獣だった」とのエピソードから、民衆からは「白痴皇シェリラ」と呼ばれ、嫌われていた。
父であるシロンリドスに甘やかされた、または手に余る存在として忌避されたことがキッカケで増長。財源とは何か、ということを全く理解していなかったこともあって、金を湯水のように使う最悪の暴君が完成した。
先代の第二分家当主で、リストリアンスとイゼルナの父。第一巻時点で、既に故人となっている。
生まれつき足が悪く、車いすでの生活を強いられていたため、屋内に引きこもりがちだった。また身体障碍を背負っていたことから父であるシロンリドスによって「第二分家」に落とされ、活動的でない性格に拍車が掛かり、かなり暗い性格の人物であったとのこと。
異母弟であるセィダルヤードの強気な性格を気に入っており、そして彼のことを信頼していた。
先々代の第二分家当主ルーフライアンスの娘で、リストリアンスとイゼルナの母。第一巻時点で、既に故人となっている。
無邪気で勝気、そして好奇心旺盛な性格をしていた。幼いころは相当なじゃじゃ馬だったとのこと。屋内に籠りがちなラルグドレンスを強引に王宮庭園へと連れ出したかと思えば、彼を連れて王宮の外に脱走するといった騒動を起こすことが多かったらしい。
外界から来た存在であるセィダルヤードに興味を示し、それがキッカケで彼と親睦を深めた。
先々代の《光帝》。可もなく不可もない凡庸な女帝だったが、次代があまりにもひどすぎた為に今では『賢皇シェミル』と呼ばれている。
贅沢好きが多いシアル王家にしては珍しく、高価で煌びやかな調度品や装飾品に興味を示さなかった人物で、質素な生活を好んでいたとのこと。潔癖としても有名で、在位当時は『変わり者の《光帝》さま』と言われていた。
弟であるシロンリドスとの間にシェリラとラルグドレンス、それと死産した女子ふたりを設けた。また従兄のルーフライアンスとの間に、シェルティナも設けた。
先代の政ノ大臣で、セィダルヤードの父。歴代最悪の《光帝》シェリラを野放しにしたどころか、増長させた張本人。また、圧政と搾取の方向性を打ち出したのは彼だった。
シアル王家でない者たちに存在価値は無いという思想の持ち主で、とんでもない外道。純血でない息子セィダルヤードを西アルヴィヌのスラム街に捨てるよう指示し、その母親である侍女に暗殺者を差し向けたりもした。
侍女長レグサが企て、セィダルヤードが実行した革命によって王宮を追われ、サイラン自治領へと逃げる羽目に。第一巻時点では存命しているが、第二巻以降は故人となっている。
皇帝《光帝》を凌ぐ権能を持つとされる最高司祭。事実上の最高権力者。当代はフワフワとした言動が多い、童顔で年齢不詳の男である。
飾り気がない簡素なものを好み、贅の限りを尽くしたような王宮のことを嫌っている。また旅好きな性格も相まって、あまり王宮には滞在していない。
当代の〈大神術師〉の足として、共に行動している大きな鳥。聖獣のように、人語を理解し、理性も持つ。また「主人なき〈闇ノ聖獣〉」を自称しているが、それを裏付ける証拠は何も無く、信憑性は無い。
かつて砂漠に居たとされる駝鳥という種族に似ているが、しかしやたら毛むくじゃらであったりと、色々と違っている。
王宮にて侍女長を務めている人物であり、ベルナファス家の当代でもある。王宮に仕える従者たちからは「陰の支配者」と呼ばれている。
彼女に逆らえる者は王宮にはいないとされている。政ノ大臣であるセィダルヤードも、傍若無人なパヴァルすらも例外ではない。
そんな彼女は、大改革の火付け役でもある。シロンリドスの横暴さ、シェリラの我儘っぷりに呆れていた彼女は、セィダルヤードという特異な存在に目を付けて……――というわけなのだ。
王制の財源を管理する「資ノ大臣」である人物。元は王都のしがない露天商だったが、パヴァルから吹っ掛けられた賭けに負けたことがキッカケで、今に至る。
セィダルヤード体制の要であり、彼女が落ちたときには王制も陥落するとさえ言われているほどの重要人物である。
前神国軍司令官。そして罪人を裁く役を担う「法ノ大臣」である人物。しかしその権力は飾り程度のもので、実質的な働きは特にしていない。罪人の処罰等は現在、憲兵団が担当しているからだ。
保守的な考えを持つ貴族ヴァルダス家の当代でもあり、いうなれば「保守層に配慮し、とりあえず登用した人物」でしかない。そのような立場も相まって、彼はセィダルヤードを良く思っていない。
公文書の管理や学舎の設立などを管轄する「文ノ大臣」である人物。ヴァルダス卿と同様に、「保守層に配慮し、とりあえず登用された人物」である為、彼自身はその立場に納得してはいない。
しかし最低限の仕事はこなしている。また文献管理官といった下の者たちから、それなりに信頼されている模様。
資ノ大臣ベジェンと相性が悪く、いがみ合う関係にある。
ユニの夫で、ユライン家の当代。憲兵団でひとつの師団を任されている軍人という顔も持つ。
シアル第二分家と親交があり、リストリアンスの友人でもあった。現在も、イゼルナの様子を伺いに定期的に離宮を訪ねている。
わけあってケリスを除いた〈神護ノ十剣〉の隊員たち、特にラントのことをひどく嫌っている。また一時はある誤解から、ユインのことを追いまわしていた。
ダルラの妻で、出自不明の人物。ユインと瓜二つの顔をしているが、しかしシャグライ族の者ではなく、サラネム山とは何の関係もないらしい。
だがユインとはやけに親しい。
第一巻では失踪していた彼女だが、第二巻では無事に見つかり、ダルラのもとに帰っている。尚、夫婦仲は良いとのこと。
離宮に住まうイゼルナ付きの怪力侍女。思い込みが激しい人物で、自称「ユインの許嫁」。山からある日突然居なくなったユインを探して、王都までやってきた。ユインを山に連れ戻すと息巻いている。
ユインを守るために、パヴァルによってロンディンは離宮に隔離されたのだが。彼女はその事実を知らず、職を斡旋してくれたとパヴァルに感謝すらしている。
なお許嫁という事実は無い。ユインの兄ヤムンに良いように転がされているだけだ。
シエングランゲラのもとに近侍者として、かつて配属されていた兄妹。兄がジェンダン、妹がカリラである。
兄のジェンダンは、手際が良く要領も良いが、臆病で心配性すぎる人物。妹のカリラは鈍臭いうえに空気が読めないものの、大抵のことでは動じず、また大胆不敵な傾向のある人物。
この兄妹は、お転婆だった幼いシエングランゲラによって散々に振り回されていた。また、幼いシエングランゲラがしょっちゅうシェリアラの居室に逃げ込んでいたことから、シェリアラの警護担当であるラントとの接点が少なからずあった。
シエングランゲラの王家離脱を機に、故郷に帰っている。
北アルヴィヌ総督であり、アルヴィヌ領の実質的支配者であるソルレダイド家の当代。野心家であり、目的の為ならば手段を選ばないことで知られている。
財産のみを信じ、損得勘定に生きる北アルヴィヌ人らしく、生粋の無神論者。光明の女神シサカの血を引くというシアル王家の伝説は信じておらず、シアル王家は「対等な立場にある商売相手」または「いずれ打ち倒せるもの」と思っている。
北アルヴィヌに流れ着いていたソロゥラム族の末裔たちをよく思っておらず、「蛮族は砂漠に戻れ」との思想を掲げている。そのため、彼はこの思想に異を唱えているセィダルヤードのことを敵視している。
ドレインス家没落を機に台頭した西アルヴィヌの旧家ディセイラ家の当代。傲慢な人物であり、他者を「己のためにある道具」としか思っていないフシがある。
領民に対して、独自に設けた過酷な税を課していることから、セィダルヤードに非難され続けているが。純血ならざる王族であり、且つ貧困街の出身であるセィダルヤードの言葉など聞くに値しないとして無視し続けている。
第三巻以降はソルレダイド卿とケルン卿と手を組み、打倒セィダルヤードを目指して暗躍する。
ブルサヌ三大名門のひとつ、ケルン家の当代。シロンリドス時代には王制と手を組み、暴利を貪っていたのだが、後にセィダルヤードとパヴァルによって「金蔓」を次々と潰され、面子を潰されてしまった。
セィダルヤード体制に移行したことによって利を得たベルナファス家やユライン家とは異なり、ケルン家はすっかり落ちぶれてしまったことから、アグレイエンスはセィダルヤードのことを強く恨んでいる。
第三巻以降はソルレダイド卿とディセイラ夫人と手を組み、打倒セィダルヤードを目指して暗躍する。
神国軍司令官である人物。槍の名手、そして清廉の士として知られている。
好き放題に振舞うシエングランゲラによって神国軍内部が引っ掻き回されている現状を憂いており、その状況を解決すべく索を巡らせているのだが。シェリアラ、そして有力な諸侯という後ろ盾を持つシエングランゲラに対して思うように手が出せず、苦心を重ねている。
前神国軍司令官であり、現在の法ノ大臣であるヴァルダス卿との間に因縁がある。また彼女は、信念なき人斬りであるパヴァルのことをひどく軽蔑している。
ラムレイルグ族の族長であり、クルスムの父。病によって夭折した妻タルスラに代わって、男手ひとつでクルスムを育て上げた。
サラネム山の代表者であり、サラネム山と外部との交渉を一手に引き受けている。また「鷹紙飛ばし」の技術を広め、主要地域に担当官を派遣する決定を下した人物でもある。
王都およびシアル王家との関係改善を目指しており、外界との交流や貿易を段階的に広げていこうと腐心しているが、変容を拒んでいる山ノ民たちが多く、同胞から糾弾されることも多い。
王都に派遣された「鷹紙飛ばし」の担当官である、ラムレイルグ族の鷹匠。猛獣舎に駐在している。ファルロンの実妹であり、ユインの親友。
相棒である鷹メルデスと共に仕事をしながら、リスタに鷹狩りの指導も行っている。兄とは異なり、リスタとの関係は良好である模様。
朗らかで、底抜けに明るい人柄であり、王宮でも従者たちから愛されている。しかし自主性がやや欠けていることから、パヴァルに叱責されることが多い。
山を離れたクルスムに代わって、ラムレイルグ族の族長を継ぐことになった人物。山獅子や山犬、猫など、雑多に扱う猛獣使い。
鞭といった道具は使わず、指笛と掛け声のみでの使役を行う。そのため獣から舐められることも多く、度々大怪我を負っている。
山犬に噛み千切られて左腕を失くしているのだが、しかしそれで懲りることもなく、今も道具を使わない使役法を続行している。その根性に感心した〈大神術師〉は彼に、意のままに動かすことができる鉄製の義手を贈った。
ヌアザンの父であり、ラムレイルグ族の族長補佐役である鷹匠。ラズミラの師匠でもある。
山の代表者であるダグゼンの右腕であり、ダグゼンと共に各地へ赴いたりもする。また、外部へ書簡を飛ばしたり、外部からの書簡を受け取るのは彼の役目である。
お人好しであり、何事も断れない性格が災いして、メズンの使い走りをやらされることも屡々。シャグライ族との間に起きた諍いの仲裁役を押し付けられることも多い。ガラの悪い隊商の用心棒たちの相手を任されることも多々あり。……そんなこんなで、彼は「山の便利屋」と化している。
彼の鷹が神国中を忙しく翔け回っているように、鷹の主人である彼もまた山の中を忙しく駆け回っている。
ワケあってシャグライ族を追放された薬師。ユインの叔父で、ユインの育ての親でもある。
保守的であり排斥思想の強いシャグライ族の出身ではあるが、メズンはその真逆。外界に興味津々で、ちょくちょく旅に出ている。また旅先で見つけた怪我人を救うことも多く、パヴァルも彼に助けられたうちの一人であったりする。
薬草に人体、歴史や伝承、最新の技術や最新の噂話など、興味の幅が広い。ただし優しさや思いやりは今一つ足りず、ひとを顎で使いまくる傾向にある。